恋愛の神様
野山はそんな事をするほどバカな女じゃない。
俺の帰りが遅いと思いつつ、呑気にソファーでゴロゴロしてたんだろ。
そんでいつの間にか爆睡してゴロゴロローテーブルの下に嵌り込んだってか……
どれほど寝像が悪いんだ、オマエはよっ。
俺は自分の非を知っていて、野山がなんにも悪くないのを知っていて、謝らなくちゃいけないと分かっていながら
―――逆切れしてしまった。
罪悪感の分だけ、それをごまかすみたいに俺はキレた。
何してんだ、俺は!と思いつつ、もう後には引けない。
「帰れ、もう。」
途方に暮れたような顔で俺を見詰める野山から顔を背ける。
暫く俺を見詰めていた野山は諦観したみたいに溜息を吐き、カバンを手にとって立ちあがった。
ペコンと頭を下げて部屋から去っていく。
パタン―――と、静かに閉じた玄関の音に俺は長い吐息を吐いて床に腰を落とした。
「………何やってんだよ、俺……」
亜子と野山を天秤にかけたら、迷いなく亜子を取る。
そうと分かっていながら、野山を傷つけて平静でいられない。
いっそ手放してしまえばいいと分かっているのに、それも出来ない。
亜子が寂しくて俺に手を伸ばすように、俺も亜子に対する寂しさを紛らわすために野山を欲しているのだろうか――――――――
否。
その応えは思いのほか簡単に出た。