恋愛の神様
否。
俺は野山を亜子と同等には見ていない。
他の一過性の付き合いの女とも違う。
アイツは――――ペットだ。
俺が好きな時に好きなように構える愛玩動物。
俺が誰と遊ぼうと、俺が亜子を愛していようと……野山は別次元にいて、俺の勝手に手繰り寄せてイイ存在なんだ。
そんな思い上がりを許してしまうのは、野山にも非がある。
オマエには罵る権利があっただろ。
他の女なら『呼びつけておいて何でほったらかすの!?どこで何してたのよ!!』て、喚きちらして物の一つも投げてきたぞ、絶対。
だけど野山はそうしない。
俺のなんもかんもを見透かすようにじっと見据えて、何も言わずに身を引く。
見切るわけじゃなく、全てを掌握した上で距離を置いてくれるのを俺は本能で察しているからこそ―――俺は余裕を保って、慌てて取り繕う事もしない。
家で待つイヌかネコみたいに。
俺の顔色を伺っていいように立ちまわってくれればいいなんて―――とんだ思いあがりだと分かっていながら。
野山はソレを受け入れる。
そんなんだから俺にいいようにされんだよ、バカ。
今更のように窓の外でチュンチュンと雀が騒ぎ出した。
俺は開き直ってローテーブルに向き直った。
「あー……。こんな時になんだけど……………旨い」
口に放り込んだ竜田揚げがバカみたいに美味くて、だからこそ余計になんか泣きたくなってきた。