恋愛の神様

―――無期欠勤

どうせ二、三日もすればほとぼりも冷めるだろうから、会社で捕まえて話をすればいい、とたかを括っていた。

それなのにまるで出社の目途がないって……

一応欠勤扱いだが、そのまま辞めるってこともある。

携帯も繋がらず、この様子ではアパートにいるとも考え難い。

絶対と信じて疑わなかった足場が脆くも崩れて行くような感覚に囚われた。


ヤバい……
拗ねている場合でも、二の足踏んでる場合でもなかった。





呆気ないほど簡単に、俺の手から飛び立った小鳥は完全に姿を消した。

俺の手が届かないところへ。











俺は単なる機械のようにやるべき仕事を淡々とこなし、少し遅い時間にいつもどおり自社に戻った。

馬場課長はやはり困惑気味の顔をしていて、鹿島部長はやはり殺気立っていた。


「だからそのうち空飛ぶぞって言っといただろがっ!何でちゃんと捕まえておかねぇんだ!この腑抜けがっ!」


部長のご機嫌の悪さを察した一課の奴等はとばっちりが来るのを懸念してさっさと帰ったようだ。

珍しく居残りがいない一課にクマの唸り声が轟く。

クマは野山が仕事を無責任に放り投げた事も腹立たしいようだが、なんだかんだ言いながらやっぱり単純に心配なんだろう。

椅子にいぎたなくふんぞり返っているが、雰囲気は『帰宅の遅い愛娘をウロウロしながら待つパパ』そのものだ。

その八つ当たり先が、俺かよ。
くそっ!

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