恋愛の神様
うろたえるばかりだったワタクシはその言葉にようやく目が覚めた思いが致しました。
今ワタクシの中にいるのは望まれない子なんかじゃない。
祝福してくれる人がちゃんといる
……それは何よりワタクシを励ましました。
落ちつきを取り戻し、ようやく冷静にモノが考えられるようになりました。
ワタクシがこんなに取り乱して、どーするのでしょう。
人生を左右しなくてはならない決断なのです。
しっかりしなさい、ワタクシ!
「とりあえず、病院に向かうわよ。」
病院の文字にワタクシは震える拳をぎゅっと握りしめました。
本当は行かなきゃいけないって分かっていたんです。
でも断定されるのが怖くて足が向けられなかったんです。
ワタクシの怯えを察したタツキさんは眉間に皺を寄せ、無愛想に言い放ちました。
「仕方ないでしょ。産むの堕ろすのは後回しにするにしても、腹痛だなんて尋常じゃないわ。私はね、赤ちゃんも心配だけど今は寧ろアンタの身体が……」
言い差して、シマッタ、というようにタツキさんは赤い顔を盛大に歪めて着ていたコートを投げてよこしました。
「べ、別に心配なんかしてないけどっ。アンタってほんと抜けてるって言うか、ほっとけないって言うか!会う度にそんな薄着でどーしようもないバカよね!」
ワタクシは思わず吹き出してしまいました。
以前、ハクトさんがぼやいていた言葉が思い出されます。
『タツキって照れ屋なんだよねー……イイトコ褒めると怒るんだぁ…』て。
本当に不器用な娘です。
本当に本当に情に厚い頼もしい子です。
アリガトウございます。
こんな愚かなワタクシを、それでも見捨てず心配してくれて。
不覚にも溢れてきた涙を隠すようにワタクシはコートに顔を押しつけていつまでも笑い続けました。