恋愛の神様


タツキさんの電話が鳴ったのは、ワタクシが病院の待合室で順番を待っていた時の事です。

どうやら、ツアーで御一緒するスタッフさんからで、ハクトさんがまだ姿を現してないようです。


「だ、大丈夫ですか?」


どうしましょう。
あんなトコロで野放しにしたのがいけなかったのでしょう。

つまりはワタクシの所為でしょうとも。

道に迷ったりだとか、悪い狩人に捕獲されたとか、解放感に唆されてついふらふら~と散歩に繰り出した、とか!!

ワタクシ、最後の推測に一票です。


「大丈夫よ。行き先は何となく予想ついてるから…。ちょっと遅くなるかもしれないけどそのうちちゃんと辿り着くわよ。」


タツキさんは落ちつき払った様子で携帯を仕舞いました。


そしてその言葉通り、一時間程後、同じスタッフさんからハクトさんが到着したとの報告が入ったようです。










その日の夜の事です。

ワタクシはリビングのソファーで項垂れておりました。


「ただいま~」


深夜になってハクトさんが御帰宅です。


「オカエリなさい。」なさいませ…」


ワタクシとタツキさんが口を揃えて、ハクトさんを迎えます。

結局タツキさんは現場には行かず、ワタクシとハクトさんの部屋で時を過ごしました。

ハクトさんのお迎えは沢蟹さんがしてくれたようです。

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