恋愛の神様

呆れてはぁ…、と溜息を吐きます。

でも、まぁ……


「分かりました。零於さんが善処してくれると言うのですから、ワタクシも努力してみせましょうとも。」

「ん。」


横柄な返答ですけれど、顔に隠しきれない笑みが滲んでいては亭主関白気取りも台無しですね。

でも、

だから―――好きです。

ワタクシを愛していると、求めていると余す事なく伝えてくれる零於さんだから、愛おしくて堪らないのです。


零於さんは本日一番の真面目な顔で握った手を正面に持ち上げ、まるで忠誠を誓うナイトのように恭しく言いました。


「草賀小鳥さん。お願いします。ヤらせて下さい。」


本当に直球勝負ですね、零於さん。

…というか、かなり切羽詰まってるみたいです。


「あ゛ぁぁ、疲れてんなら無理しなくてイイ!オマエに無理させたい訳じゃないんだ。だけどせめて一緒に寝てくれ。触れてないと何となく不安で、最近マジで熟睡出来なくて辛いんだよ。」

「……零於さん」

「頼むからその腹を触らせてくれ…その腹の肉を……っ!」


……ワタクシは今無言で離婚届を突きつける権利があると思います。

もしくは零於さんのお小遣いでお高い月謝のダイエット塾にでも通わせていただきましょう。


草賀小鳥となって早二年目突入。

夫から夜な夜な熱烈に求められるのはセックス――――ではなく腹の肉……って!

若干と言わず腹が立ちますが。

ワタクシは目の前にぶら下がっているネクタイを思いっきり引っ張りました。

ちゅっと触れ合う唇。

ふんっ、と鼻息荒く言い放ちます。


「前者でお願い致します。生憎ワタクシは零於さんに撫で回されて何も感じないほど厚い脂肪は蓄えておりませんので!」

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