Amarosso~深い愛~を召し上がれ♪
それが彼女の耳に入った時の影響は、推測がつかなかった。
完全に自分のことを吹っ切ってしまうだろうか。
今、すでに隣に新しい男がいるぐらいなのだから。
あの時の出来事は、彼女の中でそんなにも深く残らなかったか。
待たせてあったらしいタクシーに乗り込んで、二人は行ってしまった。
「へえって感じ?」
双子の片方が怜士の後姿を眺めながら、隣に振る。
「へえって感じ」
もう片方も返した。
「珍しいもの見たな」
「見たね。
でもこれ、触れられそうにないね」
「無理だね」
二人は怜士に気づかれる前にその場をそっと離れた。