ROSE         ウィーン×横浜
ミヒャエルは、ピアノを奏でる宗月を見つめる。



――何て表情で演奏するんだ。
昨日、詩月が弾き終えて震えていたのを宥めているようだ


「あの人も父親なんだな」

マスターは、ミヒャエルがポツリ言った言葉に「そりゃ~そうさ」と微笑む。


「彼はあー見えて誰より家族思いだ。彼は詩月の師匠と、密に連絡をとっている」

ハインツがミヒャエルを見上げ、険しい顔を向ける。


「だが……エィリッヒは詩月がショパンを弾いていることを話していなかったようだ」

気遣わしげな表情で宗月の演奏に、耳を傾ける。


「何を企んでいるのか、昔から油断のならない男だ」


「詩月は……詩月の心はカサカサに渇いている。コンプレックスで、今にも潰れそうだ」


「えっ!?」


「あんなに凄い『木枯し』を弾いたのに、あいつはちっとも嬉しそうな顔をしなかった……」

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