シンデレラの落とし物
「あ……ごめん、なさい……」

なにをいったらいいのかわからないまま謝る美雪を、ベッドから足を下ろした秋が身を乗り出して、その手を引き寄せた。そのまま彼女の肩を抱いて胸に顔をうずめさせ、もう片方の手で頭を抱き寄せた。
ふたつの影が重なる。

「秋くんだめ……」

「ここにはオレしかいないから。好きなだけ泣いていい」

押し退けようと秋の胸に置いた手が止まる。
優しい言葉に、余計涙が止まらなくなる。

守るように抱きしめる心強い腕。
ボディーソープのさわやかな香りと、秋の体から発せられる彼らしい温かで落ち着く匂い。
服を通しても伝わる体温。


秋くん

こんなことされてしまったら


気持ちにブレーキなんて効かなくなってしまうよ。


今日、ううん。今だけはわたしのものだと思っていいですか?
今だけは特別な関係だと思ってもいいですか?

美雪は秋の胸元のシャツを握りしめ、そこに頭をうずめて体をあずけた。ずっと押さえいたものを解放するように声をあげて泣いた。


わたしはこの瞬間を、きっと一生忘れないーーー。
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