君色-それぞれの翼-
「うるさい…よッ。」
あたしはノートで郁那の頭を軽く叩いた。
すると郁那はムックリ起き上がり、あたしを指差した。
何だ、と思うと郁那は急に笑いだした。
「イヒヒヒヒヒ…」
「きもっ!!」
再び郁那の頭をノートで叩くと、次は雪が枕を投げて来た。
「いたぁ!!」
「手が滑った。」
「嘘吐けぇ!!」
そう言って枕を投げ返す。
気付けば郁那と雪のペースに乗せられていた。
消灯時間を過ぎても枕投げは続き、先生に注意されるまで終わらなかった。
「もう寝るっ!!」
ガバッと布団を被り、目を瞑る。
先生が来てから二人も落ち着いた様で、大人しく布団に入った。
やっとゆっくり考えられる。
今日のこと。
戸谷君が誰が好きかなんて分からない。
でも、松井さんに一目ぼれしていない事は確か。
『大切な子』
それが分かれば良いのに…。
気付いた時は、もう夜明け。あたしはそのままぐっすりと眠ってしまっていた。