君色-それぞれの翼-
「ねむ…」
考え事をしながら寝ていた事に気付き、目を擦る。周りを見ると、まだ皆寝ていた。
時計を見ると、6時。起床時間は確か7時。
(トイレ行ってこよ…)
共有のトイレに向かうため、身支度をして静かに部屋を出た。
辺りはしんとしている。
ここで喋ると響くだろうな、と思いながら、わざと喉をならしてみる。
予想以上に音は響き、思わず唾を飲んだ。
角を曲がると、こちらを見ている人がいた。
眠たくてぼやけた視界を正すため、また目を擦る。
「あっ…」
戸谷君だった。
「どうしたの?」
「いや、何か声聞こえたから…誰かなと思って。」
戸谷君は優しい口調で言う。
が、あたしにとっては、こんな時間に戸谷君が此所にいることが疑問だった。
しかも指定のジャージを着ている。
「…どっか行くの?」
沈黙が続きそうなので、聞いてみる。
「ちょっと走ってくる。」
戸谷君は頬を緩ませた。
こんな時でも走るのか。あたしは感心した。
「あ、じゃあいってらっしゃい。引き止めてゴメンね。」
「じゃ。」
戸谷君は頬を緩めたまま背を向けた。
『大切な子』
戸谷君の背中を見て、ふいにその言葉を思い出す。
「戸谷君っ!!」
ただでさえ響く廊下で大声を出してしまい、自分で驚いて口許を手で覆う。
戸谷君も驚いた表情で振り返った。
「何?」
「…えと………」
聞いて良いのかな…
ちゃんと考えてから呼び止めれば良かった。
「…えと…気をつけてね。」
結局あたしは誤魔化して手を振った。
戸谷君は、少し戸惑いながらも、少し笑って走っていった。
戸谷君を見送った後、あたしは欠伸をしながらトイレに向かった。
朝から戸谷君に会えたのは幸運と言って良い。
でも、それによってまた悩む様になったのも事実。
あたしは鏡に映る自分に向かって笑ってみせた。
ところが直ぐに溜め息が漏れる。
大好きな戸谷君の笑顔を思い出しても、今朝の嬉しさと同時に、悩みに対してのイラつきの感情が芽生える。
あたしは自分の頬を音が響く位の強さで叩き、気を引き締めた。
考え事をしながら寝ていた事に気付き、目を擦る。周りを見ると、まだ皆寝ていた。
時計を見ると、6時。起床時間は確か7時。
(トイレ行ってこよ…)
共有のトイレに向かうため、身支度をして静かに部屋を出た。
辺りはしんとしている。
ここで喋ると響くだろうな、と思いながら、わざと喉をならしてみる。
予想以上に音は響き、思わず唾を飲んだ。
角を曲がると、こちらを見ている人がいた。
眠たくてぼやけた視界を正すため、また目を擦る。
「あっ…」
戸谷君だった。
「どうしたの?」
「いや、何か声聞こえたから…誰かなと思って。」
戸谷君は優しい口調で言う。
が、あたしにとっては、こんな時間に戸谷君が此所にいることが疑問だった。
しかも指定のジャージを着ている。
「…どっか行くの?」
沈黙が続きそうなので、聞いてみる。
「ちょっと走ってくる。」
戸谷君は頬を緩ませた。
こんな時でも走るのか。あたしは感心した。
「あ、じゃあいってらっしゃい。引き止めてゴメンね。」
「じゃ。」
戸谷君は頬を緩めたまま背を向けた。
『大切な子』
戸谷君の背中を見て、ふいにその言葉を思い出す。
「戸谷君っ!!」
ただでさえ響く廊下で大声を出してしまい、自分で驚いて口許を手で覆う。
戸谷君も驚いた表情で振り返った。
「何?」
「…えと………」
聞いて良いのかな…
ちゃんと考えてから呼び止めれば良かった。
「…えと…気をつけてね。」
結局あたしは誤魔化して手を振った。
戸谷君は、少し戸惑いながらも、少し笑って走っていった。
戸谷君を見送った後、あたしは欠伸をしながらトイレに向かった。
朝から戸谷君に会えたのは幸運と言って良い。
でも、それによってまた悩む様になったのも事実。
あたしは鏡に映る自分に向かって笑ってみせた。
ところが直ぐに溜め息が漏れる。
大好きな戸谷君の笑顔を思い出しても、今朝の嬉しさと同時に、悩みに対してのイラつきの感情が芽生える。
あたしは自分の頬を音が響く位の強さで叩き、気を引き締めた。