君色-それぞれの翼-


「……ちゃん…希咲ちゃん…」
名前を呼ばれたような気がして目を少し開ける。そして自分の名前を呼びながら身体を揺する南に気付いた。
隣では郁那がまだ寝ている。
「そろそろ、行った方が良いかなぁ。」
あたしは目を擦りながら身体を起こした。
外からはHRをする小会議室に向かう生徒達の話し声が聞こえる。
あたしは南と同じ様に郁那を起こした。
3人とも腕には畳の痕、顔にはうっすらと手の痕があり、鏡を見ては皮膚を伸ばして痕を消そうと努力した。
「希咲、痕ついてる。」
「郁那もね。」
「うっさいな。」
「なんだそれ!!」
「なんだそれ!!」


郁那や南は、昨日会ったばかりの人とは思えなかった。
素の自分を見せられる。
それに不思議な位、気が楽だ。
まるで随分前から仲良くしていた子の様に。


********


「委員会や、係を決めていこうと思います。」
担任の声が会議室に響く。
ホワイトボードには委員会の種類が沢山書かれていた。
一人一役、ということか。
「何する?私、楽なのが良い。」
郁那がホワイトボードに書かれている、あまり仕事の無さそうな役割をいくつか指差す。
「私余りものでいいや。」
南はどうでもよさそうだ。
「じゃ、私も。」
結局南に同意する郁那。
あたしはやりたい仕事が無いか、ホワイトボードに目をやった。

学級委員長
副学級委員長
議長
書記
風紀
美化
体育
文化
保健
選挙管理
学習
号令





どれも仕事がありそうなものばかり。
まぁ仕事の無い役割がある方がおかしいか。
特にやりたいものも無く、最終的にあたしは、先生によって美化委員に持って行かれた。
ちなみに南は風紀委員、郁那は文化委員。


見事に3人分裂した。





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