予想外の恋愛





「うーん…」

「やっぱり不味い、ですよね…」

「行程は今までと同じなんだけどねえ。どうしてだろう」

「いつもとどう違いますか?」

「渋い」

「渋い!?」



コーヒーの味が前よりひどくなった。

結構いいところまできていたのに、ここにきて急に振り出しに戻ったような感じだ。



「これと比べてみて。ナギサちゃんの方は濁ってる」

「…ほんとですね」

「どうしてこうなったのかはわからないけど、心の迷いが味にあらわれたのかもね」



店長のその言葉にドキッとしながら、赤いカップを手に取った。

いつも練習の時はブラックのまま飲むようにしているけれど、今日は不味かったので角砂糖を一つ入れた。
だけど苦い。

いつもは絶対しないけれど、二つ目の角砂糖を入れてみた。
それでも苦い。


手の中に収まる赤いカップの中の液体を覗き込む。
そこに映る自分はとても情けない顔をしていた。



「大丈夫。この前までは結構上手に出来てたでしょ?またすぐに美味しく淹れられるようになるから。練習時間は嘘をつかないからね」

「そう…ですよね」



もっともっと練習しないと。
このままでは自分が納得いかない。

このカップに、いつか極上の一杯を注いでみたい。




< 166 / 218 >

この作品をシェア

pagetop