予想外の恋愛
「うーん…」
「やっぱり不味い、ですよね…」
「行程は今までと同じなんだけどねえ。どうしてだろう」
「いつもとどう違いますか?」
「渋い」
「渋い!?」
コーヒーの味が前よりひどくなった。
結構いいところまできていたのに、ここにきて急に振り出しに戻ったような感じだ。
「これと比べてみて。ナギサちゃんの方は濁ってる」
「…ほんとですね」
「どうしてこうなったのかはわからないけど、心の迷いが味にあらわれたのかもね」
店長のその言葉にドキッとしながら、赤いカップを手に取った。
いつも練習の時はブラックのまま飲むようにしているけれど、今日は不味かったので角砂糖を一つ入れた。
だけど苦い。
いつもは絶対しないけれど、二つ目の角砂糖を入れてみた。
それでも苦い。
手の中に収まる赤いカップの中の液体を覗き込む。
そこに映る自分はとても情けない顔をしていた。
「大丈夫。この前までは結構上手に出来てたでしょ?またすぐに美味しく淹れられるようになるから。練習時間は嘘をつかないからね」
「そう…ですよね」
もっともっと練習しないと。
このままでは自分が納得いかない。
このカップに、いつか極上の一杯を注いでみたい。