予想外の恋愛
「楽しみだね、ナギサちゃんのおもてなし」
珍しくカウンターの目の前に座った二人が私の動作を眺めている。
「いや、ほんとすいません協力してもらっちゃって…」
「ほんとにな。これで最悪な味だったらぶっかけられるほうがまだマシ」
「ちょっとその件引きずりすぎじゃないですか!?」
「はあ?誰のせいだと思ってやがる」
「誰のせいですか!」
「お前だ馬鹿野郎」
ひどい。
いつまでたっても口の悪さは健在だ。
「ナギサちゃん、この間は驚いたね」
「そうそう!すごい偶然でしたよねー!」
「あの中華料理店人気なだけあって美味しかったよね」
「はい!特に小籠包が…」
「おい」
中島さんと盛り上がっていると、朝田さんが私の言葉を遮ってずいっと身を乗り出してきた。
「なんの話だよそれ」
「ああ、朝田はいなかったっけ。この前川瀬と最近出来た中華料理店に行ったんだよ。そしたらたまたまナギサちゃんとマチちゃんに会ってね」
川瀬、という名前を聞いてびくっと自分の肩が動いたのがわかった。
川瀬さんが言った言葉を信じきれていない私は、あの日からあまり考えないようにしてきた。
だけどやっぱり、心の中のモヤモヤは消えてはくれていないみたいだ。
「…川瀬と?お前、あいつに会ったのか?」
朝田さんが私に向かってそう尋ねてきた。
怪訝そうな顔でこっちを見ている朝田さんは、どういう意味を込めてそう言ったのだろうか。