予想外の恋愛
それからしばらく川瀬さんは席を立たなかった。
私が働いている姿をじっと見ている…というよりは睨まれているような気がするのはきっと気のせいではない。
胃がキリキリと痛んだ。
人間、ストレスを感じると本当に胃が痛くなるのかとこんなときに感心した。
「顔色悪くない?大丈夫?」
店長もしきりにこちらを見ては心配そうに声をかけてくれる。
側から見て自分はそんなに情けない顔をしているのかと思った。
弱くなった、本当に。
恋愛ってこんなに精神的に疲れるものだっただろうか。
「大丈夫ですよー!これ2番席に持って行きますね」
「うんお願い。…あ」
川瀬さんが席を立った。
カバンと伝票を持っているのでどうやら帰るらしい。
「ありがとうございます!少しお待ちください」
とりあえず2番席にコーヒーを運ぼうとすると、店長が横を通り過ぎて声をかけてきた。
「僕が会計するから。ナギサちゃんはそれ2番に運んでて」
「…わかりました、お願いします」
川瀬さんと目が合ったので軽く会釈する。
それからコーヒーを運び、川瀬さんが座っていた席を片付け始めていると、会計を終えた店長が慌てて駆け寄ってきた。
「ナギサちゃん、あの人がナギサちゃんを呼んでほしいって言ってる」
「え…」
「すぐ終わるって言ってるから仕事中ですって断るわけにもいかなくて。店の外にいると思うよ」
「…わかりました」