予想外の恋愛
トレイにコーヒーを二つのせてスーツの二人組に近付いた。
「お待たせ致しました」
「あ、ありがとう」
そう言って茶髪の人はやはりニコっと笑ってくれた。
彼の前にコーヒーを置き、次は黒髪の前に、とコーヒーを置こうとした瞬間。
「なんだお前。こんな所でも女に媚びうってんの」
聞こえてきた声に激しく動揺してしまった私の手元が大袈裟に狂った。
「あっ!」
「!…あっつ!」
「す、すみません!」
あろうことかテーブルにカップを倒し、熱々のコーヒーがテーブルに置かれていた黒髪男の手に見事にかかった。
「…お前…」
ギロっとこちらを睨んだ黒髪男の顔が怒りで染まっている。
すぐに冷たいおしぼりを持ってきてその手を拭こうとすると、それを勢い良くひったくられた。
「触るな」
「も、申し訳ありません…」
自分の失態をいくら後悔しても時間は戻せない。目の前の男の怒り心頭な様子を見て泣きたい気分になった。
「ナギサちゃん!」
そう言って店長が駆け寄ってきてくれた。
「お客様、大変申し訳ございません。こちらをお使い下さい。コーヒーもすぐに新しいものを用意して参ります」
氷水の入ったビニール袋を男に渡した店長はすっかり空になってしまったカップを引き上げていった。