予想外の恋愛
すかさずテーブルを拭く。
「まあまあ朝田。スーツにかからなかったから良しとしようよ」
「ああ!?お前はいつもいつも女に甘過ぎる!」
あなたは厳し過ぎます!
と言いたいのをぐっと堪え、綺麗になったテーブルにミルクと砂糖を並べ直した。
「おい女!」
「ひっ!」
「中島に優しくされたからって調子のってんじゃねぇぞ」
「中島…?」
完全に説明不足な彼の通訳をするように茶髪の彼が口を開く。
「あ、俺、中島譲(ゆずる)って名前。そっちの怖いのは朝田博人(ひろと)。よろしくね」
よろしくと言われても、出来れば今後一切よろしくしたくない。
「君は?なんて名前?」
「…沖野ナギサと申します」
「ナギサちゃんね。朝田のことは気にしなくていいから。こいつほんと他人に厳しくてさ」
「俺は自分にも厳しいんだ!」
もう目を合わせるのすら恐い。
それだけ怒らせることをしてしまった。
「あ、あの、本当に申し訳ありませんでした…」
「ちっ。もういい。早く新しいのを持ってこい」
「は、はい!」
舌打ちにさらに身を硬くしながら逃げるようにその場を去った。