予想外の恋愛
「い、いいよそんなお世辞。あ、私ちょっと料理とってくる」
「ナギサ…?」
一人そそくさとその場を離れた。
今日の会場はビュッフェスタイルなので、自分で料理をお皿に取り分けにいく必要がある。
席を立つ理由があって良かったと、心底思った。
近藤くんに会っても普通にしようと思っていたのに。
あんなことを真正面から言われると、もうどうしたらいいか分からなくなってしまった。
もう好きじゃない。
だけど変に意識してしまう。
そんな自分が嫌になる。
気を引き締めようと、お手洗いへ向かった。
冷たい水で手を洗い、鏡を見ると情けない顔と目が合った。
たまらずに両手で頬をペシッと叩き、深く息を吐き出す。
フロアの賑やかな声が聞こえる。
さっき見た限り、今日この場に出会いを求めている人は多そうだった。
私はとてもそんな気分になれそうにないけれど、今日は幸せをもらいにきたのだ。
綾の幸せな姿をこの目に焼き付けて、私も幸せな気分になろう。
そう思って、お手洗いを後にして勢いよく通路の角を曲がった。
「うわっ!」
「は!?」
…曲がったところで、誰かに衝突して後ろへとよろけた。