予想外の恋愛
半年この店で働いてきてこんな失敗は初めてだった。ついでに言うと若いのにあんなに恐い人も初めて見た。
イケメンの怒った顔というのはなるほど迫力がある。
「ナギサちゃん、誰にでも失敗はあるから。まあ、今日のはちょっと大きな失敗だったけどね。次から気を付けてくれたら大丈夫だよ」
「店長…すみませんでした」
それからなるべく奥の席を見ないようにして働いたけれど、どうしても気になってしまう。
…まだ怒っているだろうか。
私の勤務時間が終わる前に中島さんと朝田さんが席を立った。
「あ、ありがとうございます!」
慌ててレジに駆け寄る。
会計を終え、もう一度深く頭を下げた。
「あの、今日は本当にすみませんでした」
「…お前さあ、せっかく美味いコーヒー出してんだからもっとしっかりしろよ」
「…はい」
「だいたい、あんな事ぐらいで動揺するとかどんだけ男に免疫無いんだって話」
「…はい?」
もともと言いたいことを言ってしまう性格の私は出かかった言葉をどうにか喉で食い止める。
「ああ、まあ男にコーヒーかけてるようじゃモテねぇわな。免疫無いわけだ」
…なんだこの男は。