少女Fの思惑

にじゅうよん

「あ、光~っ!!」
思わず額を押さえてふらりとした。
なにを大声で叫んでくれてんだ、あのバカワンコは。
部活中のところをひょっこりとのぞきこんでみればいちはやく夕に気付かれて先程の通り大声で呼ばれてしまった。先輩にはたかれている夕を見て苦笑いするけれど、それよりも痛い。視線が痛い。
見渡せば先輩達による好奇の目。その中に一層イケメンがいると思ったら一ノ瀬でした。横にいるのは一条くんだろうか。
「澤口の彼女?1年のくせに生意気なっ!」
「ちげーっすよ!友達!!で、どーしたの?」
こうなってしまったらもういいか。本人に渡してやる。
「…一ノ瀬くんに用があって」
「一ノ瀬?あ、」
また一ノ瀬狙いかよ、という先輩達の声が聞こえたが私は違います。
「一ノ瀬に何のようだ?」
3年生…キャプテンだろうか。落ち着いていて大人っぽさがある。きっと毎日のようにくる一ノ瀬狙いの女の子に悩まされているのだろう。
「担任に頼まれて届け物です。一ノ瀬くん中間テストで1位とったのでその賞状と図書カードを…」
「あぁ、わかった。…すまないな、一ノ瀬にいいよる女子が多くて部活がままならなくなる時があってな。俺が最初に用件を聞くようにしたんだ」
「いえ、部活中のところをすみません」
「先生からの頼みなら仕方ない。…一ノ瀬!」
いつもはここで大概の女の子が追い返されるのだろう。一ノ瀬を呼んだキャプテンの声にみんなびっくりしていて一ノ瀬本人だけはわかっていたかのようにふわりと笑っていた。



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