《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★

「一子姉! 言っとくけど、チャンスは一度きりだからね。二度とこないよ。本当にこのまま諦めていいの? 好きなんじゃないの?」

「……真田さんには…好きな人がいて、私には敵わない程の美人なんだよ。それに諦めるも何もないよ。真田さんは、雲の上にいる人なんだから」


ーーーはなから無理だとわかっていた。だから、真田さんは憧れみたいな存在で好きだとかそういう存在じゃない。


「そんな風にやらないうちから諦めないでよね。一子姉らしくないよ。何でもやる前から決めるなって、あたしらに言ってたじゃない」
不二子が力説すると、三津子がそれに同意した。

「そうじゃん。長女が妹たちに自分が出来ないこと、押し付ける気?」

確かに真田さんは、遠い存在だからと諦めてた。惹かれていた気持ちをひた隠しにしてきた。

真田さんくらい素敵な人には、彼女や好きな人がいて当たり前だ。初めからわかっていたはず。それなのに、一丁前にショックなんか受けて寝込んだりした。



只ならぬ緊縛した空気の中、
「ここは、やるっきゃないよ!義姉さん」キッチンからエールを送ってきた不二子の夫。


居間にいた全員がキッチンに立つ不二子の夫、茂に視線を注いだ。


茂は、気の毒な事に女系家族の村山家で常に影が薄い。

今日も一子のパーティーに着ていく服で揉めていた村山家では誰も茂が仕事から帰ってきた事に気がついてなかったのだ。

「あれ、帰ってたの?」
不二子が冷たく言い放った。


「いつの間に……」
三津子も眉間に皺を寄せた。

なんだか冷たくあしらわれた茂は、いつものことながら、いじける。

「だからさ〜……」と視線を一子に戻し話を再開させる三津子と不二子。



「さっきから、いたのに」
ブツブツ呟く茂の言葉は、完全に無視されていた。

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