《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
驚いて少年を見ると、少年は慌てて口を押さえた。
それから、週末になるとかならず先に少年が来て寝ていた。
少年は、アドルフが魚を釣り上げるとかならず起きていて先に声をあげる。
「やった! 釣れた!」
アドルフより喜ぶ少年に、アドルフは好感を抱いた。
アドルフは少年に釣りを教えた。自分で釣り上げた時には跳ねて喜んだ少年。
少年は、喜びすぎて気がついていなかった。自分の短い髪の内側から、徐々に出てきた長い金髪の髪に。
「きみは……」
アドルフに指摘され、急いで髪を隠す少年。少年と思っていたが、実はカツラを被った女の子だったんだ。
アドルフが毎週少年だと思い会っていたのは、お忍びで来ていた街でも有名なお金持ちの家の娘だった。
娘は、窮屈な生活から開放されたくてカツラを被り少年のフリをして週末、川にたまたま息抜きをしに来ていたのだ。
アドルフに出会い、娘もアドルフに好感を持っていた。けれど、素性がバレてしまったあと、パッタリ来なくなってしまった街の娘。
アドルフは、すっかり気落ちしてしまう。魚釣りに来ても前ほど面白くない。
魚が釣れても、喜んでくれたあの子がいない。
思い切って娘にもう一度会いたいと街へ出かけたアドルフ。
そこで偶然にも、あの娘を見かける。
たおやかな金髪。美しい顔立ち。
間違いなくあの娘だ。
アドルフは、娘を見ただけで胸が踊りだすのを感じた。だが、反対に家に帰り娘を思うと、切なさに胸が焦がれ痛み出す。
切なくても会いたくても身分が違う。しかも娘には親が決めた婚約者がいると知った。
叶わない恋をしてしまったと、嘆くアドルフは、週末魚釣りをやめ一心不乱に土を練った。
練って、娘への想いを忘れる為に陶器の皿や置き物をたくさん作った。作っている間は、娘への恋を忘れることが出来た。
初めは、お遊び程度だったが徐々に陶器作りにはまり、本格的に作りたくなっていったアドルフ。
村はずれに住んでいた芸術家の家に通うようになり、やがて弟子になった。いくつもの動物を作り上げていったアドルフ。その作品の中のひとつがコレだ。
アドルフが作りあげた作品には、いつも統一されたメッセージがあった。
アドルフは、娘への気持ちはいつも口にしないで作品に込めていた。
同じ日に作った動物が、すべて揃わないとメッセージは現れない。
アドルフは作品をひとつひとつ分けて、わざと違う人や店、別々の蚤の市で売った。
決して、自分がこんな風に想っていたと娘にわからないように。