少しずつ、見えるミライ
「でも、じゃあ、余計に簡単には引けない。」

「.....え?」

「彼がどんな人なのかわからないけど、年下なんでしょ? バイトしてるってことは、就職もしてないんだよね? だったら、俺の方が未帆を幸せにできる自信がある。一度、失敗してる分、前よりも良い夫婦になれると思うし、未帆の望んでるような安定した未来を、俺なら叶えてあげられる。」

「そう、だけど..... 。」

「まだ出発まで時間があるし、迷うようなら、返事は向こうに行ってからでもいい。」

「でも.....。」

「ゆっくり考えてよ。未帆はどんな未来がほしいのか。」

「.......。」

「言わないで後悔するのは、もう嫌なんだ。思ってることは、ちゃんと伝えなくちゃいけないって、痛いほどよくわかったから。」

「修ちゃん.....。」



こんな答えが返ってくるなんて、完全に予想外だ。

そんなこと言われても、そう簡単に気持ちが変わるはずがないじゃない。



なのに、勝負を挑んで来るなんて、修ちゃんは、本当に本気なんだ。

ますます適当な答えは返せない。

二年も離れてたのに、こんなに強く思ってくれてるんだから。



それに、正直なところ、ほんの少しだけ心が揺らぐ。

浮気の疑惑がかかるまで、修ちゃんは理想の旦那様だったと思うし、結婚生活も上手く行っていた。

一度失敗したからには、お互い同じミスを繰り返さないよう気をつけるようにもなるだろう。

今、修ちゃんを選べば、さぞかし順調な結婚生活が待っているに違いない。
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