少しずつ、見えるミライ
今日は、家に帰っても朝陽はいない。

ツアーで札幌に行っていて、帰りは明日になると言っていた。



いつものように、眠る前に電話をしようと思ってたけど、こんな気持じゃ、とても自分からはかけられない。

これだけ騒がれてるのに何も連絡が無いあたり、朝陽の身の周りにも、いろいろ困ったことが起きているんだろう。



今頃、朝陽は、リリアを含めたツアーの一行とホテルにいるはず。

何も言って来ないのは、きっと身動きが取れないからだよね.......



でも、だからって、私はこのまま一人ぼっちで、この気持ちと向き合わなくちゃいけないの?

それでも朝陽は平気なの?

本当に私のこと、愛してるの.......?



信じるって決めたのに、どうしてこんなに涙が出ちゃうんだろう。

ダメだよ、泣いたら負けちゃうから。

こんなことくらいでくじけてたら、一流有名ダンサーの彼女なんて務まらないでしょ。

朝陽はこれから、今よりもっともっと有名になるんだから.......



でも、会いたいよ。

声が聞きたいよ。

早く帰って来て、嘘だって言って。

あんなのでっち上げだって、笑ってみせて。



大丈夫。私は信じてるから。

絶対、朝陽を責めたりしないから.......



ベットの上に脱ぎ捨ててあった朝陽のパーカーに包まって、彼の匂いをふわっと感じたら、少しだけホッとした。

だけど、こんなんじゃ足りない。

これだけじゃ、不安は消えてくれない。

一刻も早く、いつもみたいに抱きしめて..........
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