タマシイノカケラ
──セミが鳴き止んだ。








街路樹が、ざわめき立てる。

風が葉を揺らし、音だけで外気が解る。


きっと、もう外は秋の気配が漂っていて、あのセミの様に、私は場違いなんだと思う。

いつまでも、居心地の良かった、あの夏を覚えていたくて。










──ピンポーン。






玄関の方から音がする。


──ピンポーン。


──ピンポーン。




間隔は次第に短くなる。


──ピンポーン。



煩さに耐えられず、立ち上がる。


相手を確認しないまま、扉を開けた。






思った通り、外の風は冷たかった。




そして、思ってもみない人が、私の前に立っていた。

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