タマシイノカケラ
──ナオヤ、私が名残惜しいのは、夏なんかじゃ、ないんだよ。









灯台の光とヘッドライトが一瞬だけ交差した。
階段状になっているすぐ先に、暗闇の中、砂浜が浮かび上がっている。

手招きするように、寄せては返る白波が見えた。

その果ては闇。

水平線の彼方に、漁船のぼんやりとした光が浮いていた。

「降りる?」

私の横顔を、灯台の灯火が照らした。

2本目の缶ビールを飲んでいる助手席の彼は、静かに首を横に振った。

灯火は、ナオヤの顔をまた闇の中に隠していった。

灯台の真下、船とは違う明かりが漂っている。

海岸まで届く囃子の音色。きっと、あの岬の方で祭りは行われているのだろう。

人気のない駐車場。
2人を時折照らす光と、響く音色と、波の音。

祭りの喧騒さを想像しながら、ナオヤに背を向けぼんやりとその方向を見つめていた。

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