記憶と。
僕は、ただ廊下から、泣いている綾子を見ていた。
しばらくすると、おばさんが階段を上ってきた。
「ごめんなさい河野君。綾子、まだちょっとショックが抜けきれてないみたいなのよ・・・。」
「いえ・・・。まだそんな日にちも経ってないし・・・。俺、今日は帰ります。」
おばさんは綾子の肩を抱いてあげていた。
僕は、どうしてあげることもできず、綾子の家を後にした。
僕は、あそこまで沈んでいる綾子を見るのは初めてだった。
お父さんのこと、大好きだったんだろうという事も伝わってきた。
それでも僕は、身内を亡くす悲しさを、解ってあげられることが出来なかった。
あの日から3日後、教室に入ると、僕の横の席には綾子がいた。
ひさしぶりの登校ということもあって、友達が彼女の周りを囲んでいた。
僕は授業が始まるぎりぎりまで、廊下で庭を眺めていた。
そして始業ベルが鳴った。
みんなが綾子の周りからいなくなるのと同時に、僕は自分の席に座った。
「もう、大丈夫なの?」
「うん、ごめんね。せっかく来てくれたのに。」
「いや・・・。」
少しだけ、ほんの少しだけ、自分と綾子が違う気がしていた。
その日は、それ以来、一言も話せなかった。
学校が終わり、僕達はいつもの道を帰り始めた。
「本当に大丈夫?元気ないみたいだったけど・・・。」
「うん・・・。大丈夫。」
「本当に?」
「大丈夫だってば!」
綾子がいきなり泣きそうな顔で叫んだ。
「出来るだけ思い出さないようにしてるのに!なんでそうやって思い出させようとするの!」
僕は自分の言葉の無神経さに気が付いていなかった。
ただ、心配で、それだけだった。
それが綾子にとってどれだけ辛いことを言っていたか、解っていなかった。
しばらくすると、おばさんが階段を上ってきた。
「ごめんなさい河野君。綾子、まだちょっとショックが抜けきれてないみたいなのよ・・・。」
「いえ・・・。まだそんな日にちも経ってないし・・・。俺、今日は帰ります。」
おばさんは綾子の肩を抱いてあげていた。
僕は、どうしてあげることもできず、綾子の家を後にした。
僕は、あそこまで沈んでいる綾子を見るのは初めてだった。
お父さんのこと、大好きだったんだろうという事も伝わってきた。
それでも僕は、身内を亡くす悲しさを、解ってあげられることが出来なかった。
あの日から3日後、教室に入ると、僕の横の席には綾子がいた。
ひさしぶりの登校ということもあって、友達が彼女の周りを囲んでいた。
僕は授業が始まるぎりぎりまで、廊下で庭を眺めていた。
そして始業ベルが鳴った。
みんなが綾子の周りからいなくなるのと同時に、僕は自分の席に座った。
「もう、大丈夫なの?」
「うん、ごめんね。せっかく来てくれたのに。」
「いや・・・。」
少しだけ、ほんの少しだけ、自分と綾子が違う気がしていた。
その日は、それ以来、一言も話せなかった。
学校が終わり、僕達はいつもの道を帰り始めた。
「本当に大丈夫?元気ないみたいだったけど・・・。」
「うん・・・。大丈夫。」
「本当に?」
「大丈夫だってば!」
綾子がいきなり泣きそうな顔で叫んだ。
「出来るだけ思い出さないようにしてるのに!なんでそうやって思い出させようとするの!」
僕は自分の言葉の無神経さに気が付いていなかった。
ただ、心配で、それだけだった。
それが綾子にとってどれだけ辛いことを言っていたか、解っていなかった。