たった一人の甘々王子さま


「はい、確かに受けとりました。おめでとうございます。」


優樹と浩司は二人で役所に来ていた。
婚姻届を提出するために。


「これで田所優樹から相楽優樹になったね。」


「うん。本当に、事務的だね。さっぱりしててつまんない」


二人で車に乗り込む。
皆が待つ式場へ向かう為に。


「さて、本日の最大イベントに挑みますが......優樹の心境は?」


「え?心境って?」


「ドキドキするとか......なにか思うところはないの?」


「ん~まだ実感ないよ。準備とかさ美樹ちゃんが張り切っていて冷めたもん。浩司も忙しくて一緒に打ち合わせに参加したの数えるくらいだしさ」


「それに関しては何も言えません......」


浩司の運転で式場へ向かう。
皆が会場まで足を運びやすいように最寄り駅からは出来るだけ近い場所を選んだ。
だから、緑が多くて穏やかな場所......とは言えないかも。
都会の雰囲気バッチリだし。


「優樹のウエディングドレスどれに決めたか立ち会えなかったから楽しみなんだよね。」


運転しながら浩司は呟いた。


「候補にあげていたやつだから知らなくはないでしょ?」


優樹も窓の外を見ながら会話する。
これから結婚式を挙げるなんて雰囲気はまだない。


「それでも、沢山の候補の中のひとつでしょ?覚えてないよ......」


「まぁ、数時間後のお楽しみだよね」


「そうだね」


車を走らせること40分。
式場へ到着した。


先に来ていた両親は優樹を見つけると引き摺るように更衣室へ。


「優樹ちゃん!待ってたわよ!さ、着替えましょう!」


「え?ちょっと!美樹ちゃん待ってよ!」


「優樹ちゃん!浩司くんとはまた後で会えるから。綺麗に変身するわよ!」


小さな母・美樹には逆らえない。
俊樹もエミも呆れ顔。


「俊樹くん。私、心配だから優樹のところに行ってくるね」


「あぁ、悪いな。頼むよ」


引きずられる優樹の後を追ってエミも更衣室へ。
その後ろ姿を見ていた俊樹は隣に立つ浩司に


「浩司さん。今まで色々ありがとうございました。これからも優のこと宜しくお願いします」


と、頭を下げた。


「俊樹くん、頭をあげてよ。」


浩司は俊樹の肩に手を当て顔をあげさせる。


「お礼をいうのはこっちだよ。田所家の大切な姫君を貰うんだからね.........」


二人は結納の時を思い出した。
『一応、形だけでもやっておこうか』
と、浩司の父の言葉で急遽行われることになった結納。
慣れない着物姿で動きがぎこちない優樹だったのを思い出して、俊樹は笑いが込み上げる。


「内股歩きが出来なくて、優の後ろで笑いをこらえるの必死だったんですよ。浩司さんにも見せたかったな~」


「あぁ、あのときね。流石に優樹に怒られたよ......」


「笑いすぎて?」


「それもあるけど、それ以外でも......ね」


「ご馳走さまです」


二人は視線を合わせてまた笑った。


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