たった一人の甘々王子さま


「新郎様、そろそろご準備をお願いいたします。更衣室は彼方で御座いますので......」


式場のスタッフが浩司の側へやって来て案内をする。


「では、浩司さん。また後で」


「あぁ、ありがとう」


俊樹は親族控え室へ足を向ける。
浩司もスタッフと共に更衣室へ。


「ご準備ができましたら側で待機しているスタッフにお声をかけてください。新婦様と新婦様のお父様と最終確認をさせていただきます。」


「はい。宜しくお願いします」


更衣室には浩司が着るタキシードが掛けられている。
鏡の前に立ち、自分の姿を見つめる。


「とうとうこの日が来たんだよな......」


少しずつ結婚する気分になってきた浩司だった。



――――――――――――――――――



浩司と別れた優樹は、あっという間に着ている服を剥ぎ取られて叫んでいた。


「ちょっと、美樹ちゃん!子供じゃないんだから一人で着替えられるよっ!」


「何いってるの!補正下着のことすっかり忘れていた子が!ほら、今つけているブラ外してこれ着けなさい!」


と言って、優樹の目の前に白いレースのガードル付きのブラを渡す。


「こんなにもフックが付いてるの初めて見る......苦しくないの?エミの時もこれつけるの?」


その補正下着を持ったまま優樹はエミに問いかけた。


「......うん、たぶんね。それをつけると少しウエストが細くなるし胸も大きくなるから......」


「ふーん、そう。花嫁ってめんどくさいね」


優樹は未だに他人事。自分が花嫁だという実感はまだないみたい。


「優樹ちゃん。ほら、急いで。花嫁はメイクもヘアアレンジもあって忙しいのよ!」


ドレスのスタンバイをしている母・美樹はスタッフを差し置いて仕切り出す。


「おば様......おば様もそろそろ着替えないと間に合いませんよ?」


エミが然り気無く優樹から注意を逸らすため声をかける。


「あ、そうよね。私も着付けてもらってくるわね。優樹ちゃん、どっちが綺麗に仕上げれるか競争よ!」


そう叫んで、母・美樹は隣の更衣室へ入っていった。


「誰の結婚式なんだか......」


「おば様のあんなに素早い動き、初めて見たかも......」


「うん。初めて見る。俊も見たことないかもね......」


優樹とエミは呆気にとられた。


「あ、優樹。ドレス着なくちゃ!ほら、下着つけて。私が順番教えるから」


「え?下着をつける順番ってあるの?」


「補正下着の場合はあるのよ。基本は下から着けるの。からだのお肉を上に持ち上げながら全部胸に持っていく感じでね。」


エミは身につける順に下着を並べる。


「手伝ってあげられないから、優樹が頑張って着けてね。はい、これからね」


優樹は受け取って履いていく。慣れない下着に戸惑いながら。
ガードルにはフックが多くてイライラが増す。幾つか嵌めても途中で外れてしまうから......


「女子って大変なんだな......」


「何を今さら呟いてるのよ。はい、次はこのブラをつけてね」


更衣室の中でもカーテンてしきられた小さなスペースで着替えをする優樹。


「エミがいてくれて助かったよ。一人じゃほんとに着れなかったかも......知らないスタッフに裸見られるのも恥ずかしいし」


< 164 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop