たった一人の甘々王子さま
「はー疲れた!!疲れたよぅ」
披露宴も終わって、二次会にも参加。
三次会のカラオケは少しだけ参加して主役なのに先に失礼させて貰った。
家に帰ってきて、ベッドに飛びこんで、うつ伏せの大の字で『疲れた』の連発。
足も手もバタつかせている。
「優樹.........折角のワンピースがシワになるよ?疲れたのはわかったから着替えるよ」
ジャケットを脱いで、先に部屋着に着替えるのは浩司。
ジャケットを受け取ってハンガーにかける......なんて優樹がするわけがない。
少し残念に思う浩司はそんな素振りを見せない。
「こんな可愛いの着るのは今日だけですぅ。シワになっても知らない.........」
「俊樹くんとエミさんからのプレゼントなのに?そんな扱いは失礼だよ?」
優樹が今着ている服は俊樹とエミからの結婚祝いの服だった。
『今日くらい女の子の服を着たってバチは当たらないわよ。持っていて損はないから、たまには着てよね』
と、プレゼントしてくれたのだ。
「もう動きたくない......足いたい......」
浩司の言葉も聞く気がない優樹は目も閉じ始めた。
「お風呂の準備してくるから、それまで待てる?」
「んー......」
優樹に声をかけて浩司はお風呂場へ行く。
男女逆のような気もしないでもないのだが.........これも、浩司の愛なのでしょうか?
『チャポン―――』
優樹がベッドに横たわって暫く時間が過ぎた。
なのに、何かで温かく身体を包み込んでくれる。
『チャポン――――』
と、水滴の音が聞こえる。
「んー......」
「あ、優樹。起きた?」
「あれ?.........いつの間にお風呂?」
「優樹が寝ている間にお風呂だけど?」
眠っていた優樹が目を覚ました場所はベッドではなくお風呂場、しかも湯船の中だった。
入浴剤も入っていて優しい香りがしている。
「寝ちゃってたんだ......」
「気持ち良さそうに寝てましたねぇ~」
浩司の胸に凭れるようにお湯の中で目を覚ました。
温かくてもう一眠りできそうなくらい。
「優樹、目が覚めたのなら身体洗う?」
「んー、もう少し一緒に浸かってたい」
お湯の中で向きを変えて上半身を横に向ける。浩司の心音を聞いている姿勢になった。
トクトクトク――――
ただそれだけで心が落ち着く。
また眠たくなる。
ずっと引っ付いていたい。
「......離れたくないよぅ.........」
ポツリと出た言葉は浩司の耳にも届いた。
静かな浴室に優樹の声は悲しげに響く。
そっと優樹の顔を覗き込むが、浩司の胸にぴったりと抱きついていて見ることができない。
顎に手を添えて、ゆっくりと上に向かせた。
「今日結婚式を挙げたばかりの新婦の台詞じゃないね。嫌な夢でも見たの?」
浩司の言葉に首を横に振る。
頬に添わせた浩司の手に優樹も自身の手を重ねた。
「浩司の傍にずっと居たいの。たたそれだけ」
優樹はそう言うと、また浩司の胸に額をくっ付けた。
出会った頃には考えられないくらいの仕草。
浩司が時間をかけて優樹の心の鎧を剥ぎ取ったら、こんなにも素直な可愛い女の子になってくれた。