たった一人の甘々王子さま


駐車場まで歩くのにもお腹の張りが気になるのか擦ってばかりの優樹。
お腹を擦るのは張りを増長させるから良くなかった筈だけど......
ん?違ったか?


自動ドアのところで優樹を待たせて少し離れたところに止めた車を取りに急いだ。
優樹の元へ車を回したとき、お腹の張りが辛いのか壁に凭れていた。
申し訳ないと思いながら思いやり駐車場に停めさせもらい、優樹の手を取り助手席へ促し座らせる。


その時『ポン』と小さな音が聞こえた。
どこかの子供が鳴らした音だと思っていたら優樹が車から降りようとする。


「ちょっと優樹、なんで降りるの?」


俺の手を掴んだまま離さない優樹は下を向きながらお腹を擦って


「浩司......破水したかも。ポンッて音したし、なんか羊水出てきた感じ。パット当ててるから漏れてはないけど.......このまま座ったら車のシートが濡れちゃう」


自分と赤ちゃんのことを優先させてもいいのに車のことを心配してくれるなんて..........
そっと優樹の頭を抱き寄せて今するべきことの優先順位を決める。




「確か、ここにもしもの時にと思って入れておいたビニールシートがあったはず......それを敷こう」


シートの後ろポケットに手を入れてお目当てのものを探す。


「あ、あった!優樹、待っててよ」


急いで敷いて優樹を座らせる。
病院に連絡して指示を仰ぐ。
破水しても痛みがなければゆっくりでも良いらしいが優樹は痛みが出ているので病院へ行くことになった。


つぎにお義母さんにも。
車で向かっている最中だったらしく玄関先に用意していた鞄を持って病院へ行ってもらうように。
こんなとき、合鍵を渡していて良かったと思う。


車を出そうと優樹に視線を向けたら痛みが増したのか唸り出した。


「うぅ.........いったーい。.........うあーっ!」


「優樹、もうひと踏ん張り。急いで病院へ向かうから」


「んあぁ――――」


必死で痛みをやり過ごす優樹に『頑張れ』の思いを込めて手を握る。


「いやー!痛い!ジャマ!いらん!いたいぃ―――」


叫びながら手を振りほどかれた。


結構、傷つく.......




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