涙空*°。上
―未遥said―

『み...はる?』


あたしの顔をみた夏樹は心底驚いたみたいだった。


久しぶりの夏樹の姿に、
凜じゃないけど涙が出そうになった。



『どうしたの?こんなところまで』
夏樹はあたしの座っている所まで歩いてきて、そう言った。


『陽と待ち合わせ...』



こんなこと言いたいわけじゃない。

こんな話してる場合じゃない...


もっと、大事な...


1年前の夏、夏樹に何があったのか...



でも...聞いていいのか疑問に思った。




『相変わらずラブラブだなぁ。じゃぁ、俺はこれで帰るから...っ!?』

離れようとした夏樹の腕を、
あたしは強く掴んだ。



周りのお客さんがこっちを見ていても、
まったく気にならないくらい、
あたしは夏樹を見つめた。




『離せよ、未遥』
夏樹が低い声を出した。



『座りなよ、夏樹。まだ来たばっかりでしょ?』
あたしも負けじと低い声を出した。


ここで逃がしたらたぶん、
一生会えない気さえした。




『今すぐ凜に電話かけてもいいんだけど』
あたしは睨むように夏樹を脅した。


少し...てか、
かなり卑怯なのはわかっていたけど...




『未遥の怖さにはかなわねぇな』
って、夏樹が笑うのをわかっていたから。



夏樹はあたしの向かい側に座って、アイスコーヒーを頼んだ。



『元気だった?』

『まぁね』

久しぶりにみた夏樹は、
髪も身長も伸びたけど、
痩せたような気がするのは気のせいかな。


『夏樹は?』

『俺もまぁまぁ』
夏樹は懐かしい笑顔で笑った。


店員がアイスコーヒーを運んできた。





何から話せばいいんだろう。
聞きたいことも言いたいこともたくさんありすぎて、何から話せばいいのかわからない。

凜には連絡をするべきなのか...
でも、凜も今は龍樹くんといるはず。





『凜には言わないで』
夏樹は弱々しい声を出して、
窓ガラスの外の景色を眺めた。


『うん...』
そう、返事をすることしかできなかった。



だってあまりにも、
その横顔がすごく綺麗で。
ひどく悲しく見えた。



『なつ...』
『未遥、凜は元気?』


その笑顔があまりにも寂しそうで、
今にも泣きだしそうな顔だった。


あたしは確信した。




今でも夏樹は凜のことを想っている。

あの言葉の通り...。





『げん...きだよ、相変わらず...馬鹿だよ』
あたしの目からは涙が溢れてた。



『困ったな、未遥泣かせると陽に殺されちゃうだろ』
そう言って、夏樹はまた笑った。



『夏樹...教えてよ、本当のこと...』


夏樹は一瞬驚いたような顔をした。
『流石は未遥。やっぱ隠し事できねぇな』


口角を少しあげて笑う夏樹は、
あまりにも龍樹くんに似ていた。









『俺ね、あと1年で死ぬんだ』







夏樹から語られた真実は、
耳を疑いたくなるような事実だった。





あたしの溢れる涙は、
止まることをしらなかった。
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