ビターチョコ
翌日の朝のホームルーム後、秋山くんがポツリと愚痴をこぼした。
昨日の深月のことがあってから、秋山くんは文系に進んだことを、日に日に後悔するようになったという。
「無理やりにでも理系に進めばよかったかな。
小野寺と美冬ちゃんはいいとして、違うクラスの麗眞と椎菜ちゃんの気持ちがよく分かる。
好きなコの授業中の可愛い姿見れないの、なかなかに拷問だわな」
「で?
結局、ちゃんと昨日は深月ちゃんの家まで送ってやったのか?」
麗眞くんの問いに、秋山くんはふるふると首を横に振った。
「家までは送ってやったよ。
ただし、深月の家じゃなく俺の家にな。
1時間くらい俺の腕の中で泣いてたと思ったらいつの間にか寝てやがって。
本気で理性吹っ飛ぶかと思った、マジで。
手を出さないでワイシャツの第2ボタンで隠れるくらいの位置に所有印残すくらいで留めた俺を誰か褒めてほしいくらいだ。
ところで、椎菜ちゃんとか美冬ちゃんは?」
「多分保健室だろ。華恋ちゃんに昨日の分の授業のノートのコピーを渡しに行ったとみた。
それを勘付いた深月ちゃんが、美冬ちゃんか華恋ちゃんに道明、お前とのイロイロについて事情聴取されてる、に1票」
「あり得るな、それ。
ってことで俺も1票だ。
そういう事情を察するの、女子が一番早いんだよな」
こういう話の流れは苦手だ。
「じゃあ私、深月ちゃんたちを迎えに行ってくるね!」
そう言ってエレベーターと階段を使って保健室に向かう。
「なぁんだ。秋山くんの家に泊まった、って聞いたから、ちょっと期待したのに。
結局先へは進めず、なの?
もー、深月の方から秋山くんに迫ってみれば?深月の方も、覚悟は出来てるんでしょ?
秋山くんとならいいって」
「そうよ。深月くらいスタイル良くて可愛い子を目にして我慢できないはずがないって。
据え膳食わぬは何とやら、ってね。
それにしても、よく彼も昨日我慢したものね。
秋山くんじゃなくて麗眞くんだったら絶対アンタ、とっくに押し倒されてコトに及んでるわ」
「麗眞はね、うん。確実にそうなる。
そういうスイッチ入ると別人になるから。
言葉責めが十八番。
私に朝から言うにはキワドイ台詞を何度も言わせようとしてくるし。
1回じゃ物足りないみたいで、3回はザラなんだけど。
本人曰く、私が可愛くてかつ色っぽいのが100%悪いんだってさ」
女子陣のドン引きしているような雰囲気がドア越しに伝わってくる。
小野寺くんや麗眞くんが危惧した通りの話の展開になっているな、と感じた。
こういうときは、空気が読めないほうが得なのだ。
「おはよー!迎えに来たよ?
皆、そろそろ1時間目じゃないの?」
「ほらほら、理名ちゃんの言う通りよ?
早く教室に行きなさい」
伊藤先生の助け舟に感謝だ。
「あ、華恋ー。
お昼休みに食堂ねー」
それだけ告げて、皆はぞろぞろと教室に向かった。
その日の昼休み、琥珀ちゃんと華恋も交えて食堂にてお昼ごはんを食べていた。
「琥珀ちゃん、昨日は改めてありがとう!
琥珀ちゃんがいなかったら、先生が校内見回りするまで気付かれなかったかも」
「全然気にしないで!
深月は何も悪くないし。
悪いのはアイツらよ。
それに、嬉しかったんだ。この間食堂で助けて
くれたお礼がしたいな、って思ってたところだったから」
「それにしても、進路のことで親と喧嘩して、その腹いせにやったらしいな。
その女子生徒の友達が吐いてくれたぜ」
「ほんと、18にもなって子供だねぇ。
年上彼氏とかいても呆れられてすぐ別れそう」
「で、いったいどういう経緯であの場所見つけたの?
琥珀ちゃんは」
琥珀ちゃんの話をまとめる。
2人組の片方が深月が生徒会まで手伝っている事実が気にくわなかったらしい。
どうやら内申点上げようって腹づもりなのだと邪推したらしい。
しばらくあの倉庫に朝まで閉じ込めておけば反省する、ということで閉じ込めたようだ。
その話を、たまたま聞いたのが琥珀ちゃんだ。
マネージャーとして巽くんのバレー部の応援をしようか迷って、練習風景を見に行った帰りだったらしい。
今の話はどういうことだと詰め寄っても吐かなかったので、2人それぞれの目や喉を狙ってフィンガージャブを繰り出すと怯んだ。
さらにその隙をついて合気道の小手返しを繰り出したそうだ。
これ以上のことももっとできるけど、受けてみるかという脅しに近い台詞を投げる。
するとようやく、深月を倉庫に閉じ込めたことを白状したという。
そこからは秋山くんと麗眞くんに合流して、一緒に倉庫のドアを塞いでいる机やほうきを片付けた。
埒があかないため、琥珀がドアを蹴って開けると同時に男子2人がダッシュで中に入り、体を張って深月を守ったということらしい。
「深月、閉じ込められたことより自分がそういうことをされる兆候に気付けなかったことにショック受けて泣いてたよ。
泣いてる深月、可愛すぎて理性持ちそうにないから、無理矢理泣き止ませて連れて帰った、ってオチがついてるけどな。
とにかくありがと、琥珀ちゃんも麗眞も。
それから、部室で連絡係になってくれた椎菜ちゃんも。
お前らがいなかったらもっとひどいことになってた」
「もう、ミッチーったら!
昼間からそういうこと言わないで、照れるじゃん!
授業集中出来なかったらミッチーのせいだからね!責任とってよねー!」
「どうやって?
それを言ってくれないとさ、どうしようもないじゃん?
可愛い深月のお願いなら何でも聞くよ、俺は」
秋山くんと深月の会話が羨ましいのか、2人の方をチラチラ見る琥珀ちゃんに気付いたのか、華恋が言う。
「琥珀ちゃんもさ、困ったら言ってね?
巽くんにアプローチかけたいんでしょ?
彼は同じ学年だから美冬のラジオ聞かれちゃ困るんだよね、そこはちょっと考える必要があるけど。
なんとかして協力したいし」
そんな会話をしていると、ほらほら、もうすぐ昼休み終わるよ、食べてない子は早く食べなと、おばちゃんが声を掛けてくれた。
私は空いた食器をおばちゃんに渡す。
「あら、ありがとうね。
アンタたちがいつもちゃんと食べきってくれるから作りがいがあるわ。
あら、今日は近頃いなかった子がいるわね。
もういいの?
たくさん食べて元気だしなね」
華恋のことだろう。
しかし、本人は恋愛話に夢中のため、おばちゃんからそう言われたことに気付いていない。
ドンマイ、おばちゃん。
「美冬、手伝うか?」
そういうが早いが、唐揚げやサラダがお皿から消える。
小野寺くんの仕業だ。
「ったく、しっかり食えよな。
細いから何かのはずみで骨折らないか心配。
俺は、細すぎるよりちょっと肉ある方が抱き心地良くて好きなんだけど」
「何言ってるのよ、賢人ったら!
もー、そう言うこと言われると身体が疼くじゃん」
「んー?それは抱いてほしいってこと?」
「もう!」
美冬本人は顔を真っ赤にしながら、皿の中のお惣菜たちは周りの皆が食べている。
傍から見たら食材を食べられて不満げなように見えなくもない。
皆の協力で、予鈴が鳴る前に美冬の前に置かれた皿は空になった。
遅刻すると怒る先生だということを思い出し、理系クラスの椎菜と深月と共に急いで食堂から教室に向かう。
「椎菜、深月、放課後な」
私には声が掛からなかった気がするが、それもそのはず。今日は私は大学受験の塾の体験講習が入っているのだ。
もう高校生活最後の夏だと思うしかない。
来年は受験で頭がいっぱいだろうから。
昨日の深月のことがあってから、秋山くんは文系に進んだことを、日に日に後悔するようになったという。
「無理やりにでも理系に進めばよかったかな。
小野寺と美冬ちゃんはいいとして、違うクラスの麗眞と椎菜ちゃんの気持ちがよく分かる。
好きなコの授業中の可愛い姿見れないの、なかなかに拷問だわな」
「で?
結局、ちゃんと昨日は深月ちゃんの家まで送ってやったのか?」
麗眞くんの問いに、秋山くんはふるふると首を横に振った。
「家までは送ってやったよ。
ただし、深月の家じゃなく俺の家にな。
1時間くらい俺の腕の中で泣いてたと思ったらいつの間にか寝てやがって。
本気で理性吹っ飛ぶかと思った、マジで。
手を出さないでワイシャツの第2ボタンで隠れるくらいの位置に所有印残すくらいで留めた俺を誰か褒めてほしいくらいだ。
ところで、椎菜ちゃんとか美冬ちゃんは?」
「多分保健室だろ。華恋ちゃんに昨日の分の授業のノートのコピーを渡しに行ったとみた。
それを勘付いた深月ちゃんが、美冬ちゃんか華恋ちゃんに道明、お前とのイロイロについて事情聴取されてる、に1票」
「あり得るな、それ。
ってことで俺も1票だ。
そういう事情を察するの、女子が一番早いんだよな」
こういう話の流れは苦手だ。
「じゃあ私、深月ちゃんたちを迎えに行ってくるね!」
そう言ってエレベーターと階段を使って保健室に向かう。
「なぁんだ。秋山くんの家に泊まった、って聞いたから、ちょっと期待したのに。
結局先へは進めず、なの?
もー、深月の方から秋山くんに迫ってみれば?深月の方も、覚悟は出来てるんでしょ?
秋山くんとならいいって」
「そうよ。深月くらいスタイル良くて可愛い子を目にして我慢できないはずがないって。
据え膳食わぬは何とやら、ってね。
それにしても、よく彼も昨日我慢したものね。
秋山くんじゃなくて麗眞くんだったら絶対アンタ、とっくに押し倒されてコトに及んでるわ」
「麗眞はね、うん。確実にそうなる。
そういうスイッチ入ると別人になるから。
言葉責めが十八番。
私に朝から言うにはキワドイ台詞を何度も言わせようとしてくるし。
1回じゃ物足りないみたいで、3回はザラなんだけど。
本人曰く、私が可愛くてかつ色っぽいのが100%悪いんだってさ」
女子陣のドン引きしているような雰囲気がドア越しに伝わってくる。
小野寺くんや麗眞くんが危惧した通りの話の展開になっているな、と感じた。
こういうときは、空気が読めないほうが得なのだ。
「おはよー!迎えに来たよ?
皆、そろそろ1時間目じゃないの?」
「ほらほら、理名ちゃんの言う通りよ?
早く教室に行きなさい」
伊藤先生の助け舟に感謝だ。
「あ、華恋ー。
お昼休みに食堂ねー」
それだけ告げて、皆はぞろぞろと教室に向かった。
その日の昼休み、琥珀ちゃんと華恋も交えて食堂にてお昼ごはんを食べていた。
「琥珀ちゃん、昨日は改めてありがとう!
琥珀ちゃんがいなかったら、先生が校内見回りするまで気付かれなかったかも」
「全然気にしないで!
深月は何も悪くないし。
悪いのはアイツらよ。
それに、嬉しかったんだ。この間食堂で助けて
くれたお礼がしたいな、って思ってたところだったから」
「それにしても、進路のことで親と喧嘩して、その腹いせにやったらしいな。
その女子生徒の友達が吐いてくれたぜ」
「ほんと、18にもなって子供だねぇ。
年上彼氏とかいても呆れられてすぐ別れそう」
「で、いったいどういう経緯であの場所見つけたの?
琥珀ちゃんは」
琥珀ちゃんの話をまとめる。
2人組の片方が深月が生徒会まで手伝っている事実が気にくわなかったらしい。
どうやら内申点上げようって腹づもりなのだと邪推したらしい。
しばらくあの倉庫に朝まで閉じ込めておけば反省する、ということで閉じ込めたようだ。
その話を、たまたま聞いたのが琥珀ちゃんだ。
マネージャーとして巽くんのバレー部の応援をしようか迷って、練習風景を見に行った帰りだったらしい。
今の話はどういうことだと詰め寄っても吐かなかったので、2人それぞれの目や喉を狙ってフィンガージャブを繰り出すと怯んだ。
さらにその隙をついて合気道の小手返しを繰り出したそうだ。
これ以上のことももっとできるけど、受けてみるかという脅しに近い台詞を投げる。
するとようやく、深月を倉庫に閉じ込めたことを白状したという。
そこからは秋山くんと麗眞くんに合流して、一緒に倉庫のドアを塞いでいる机やほうきを片付けた。
埒があかないため、琥珀がドアを蹴って開けると同時に男子2人がダッシュで中に入り、体を張って深月を守ったということらしい。
「深月、閉じ込められたことより自分がそういうことをされる兆候に気付けなかったことにショック受けて泣いてたよ。
泣いてる深月、可愛すぎて理性持ちそうにないから、無理矢理泣き止ませて連れて帰った、ってオチがついてるけどな。
とにかくありがと、琥珀ちゃんも麗眞も。
それから、部室で連絡係になってくれた椎菜ちゃんも。
お前らがいなかったらもっとひどいことになってた」
「もう、ミッチーったら!
昼間からそういうこと言わないで、照れるじゃん!
授業集中出来なかったらミッチーのせいだからね!責任とってよねー!」
「どうやって?
それを言ってくれないとさ、どうしようもないじゃん?
可愛い深月のお願いなら何でも聞くよ、俺は」
秋山くんと深月の会話が羨ましいのか、2人の方をチラチラ見る琥珀ちゃんに気付いたのか、華恋が言う。
「琥珀ちゃんもさ、困ったら言ってね?
巽くんにアプローチかけたいんでしょ?
彼は同じ学年だから美冬のラジオ聞かれちゃ困るんだよね、そこはちょっと考える必要があるけど。
なんとかして協力したいし」
そんな会話をしていると、ほらほら、もうすぐ昼休み終わるよ、食べてない子は早く食べなと、おばちゃんが声を掛けてくれた。
私は空いた食器をおばちゃんに渡す。
「あら、ありがとうね。
アンタたちがいつもちゃんと食べきってくれるから作りがいがあるわ。
あら、今日は近頃いなかった子がいるわね。
もういいの?
たくさん食べて元気だしなね」
華恋のことだろう。
しかし、本人は恋愛話に夢中のため、おばちゃんからそう言われたことに気付いていない。
ドンマイ、おばちゃん。
「美冬、手伝うか?」
そういうが早いが、唐揚げやサラダがお皿から消える。
小野寺くんの仕業だ。
「ったく、しっかり食えよな。
細いから何かのはずみで骨折らないか心配。
俺は、細すぎるよりちょっと肉ある方が抱き心地良くて好きなんだけど」
「何言ってるのよ、賢人ったら!
もー、そう言うこと言われると身体が疼くじゃん」
「んー?それは抱いてほしいってこと?」
「もう!」
美冬本人は顔を真っ赤にしながら、皿の中のお惣菜たちは周りの皆が食べている。
傍から見たら食材を食べられて不満げなように見えなくもない。
皆の協力で、予鈴が鳴る前に美冬の前に置かれた皿は空になった。
遅刻すると怒る先生だということを思い出し、理系クラスの椎菜と深月と共に急いで食堂から教室に向かう。
「椎菜、深月、放課後な」
私には声が掛からなかった気がするが、それもそのはず。今日は私は大学受験の塾の体験講習が入っているのだ。
もう高校生活最後の夏だと思うしかない。
来年は受験で頭がいっぱいだろうから。