君愛。
必死で圭太さんを押すけど、やっぱり男の人の力には敵わなくて。
私は昨日同様、圭太さんに唇を奪われた。


いくら押しても離れてくれない圭太さん。
思い切り押してもビクともしない。


怖い。


私は初めて圭太さんの事を怖い、と認識した。
唇が離れて私の服にかかる手。


「嫌っ!」


私は思い切り、圭太さんの頬を平手打ちした。


「いってえ。」


頰を押さえている圭太さんに、私は思わず謝った。


「すいませんっ。」


「大丈夫、俺も悪かったよ。だけど俺の事も真剣に考えて置いて。」


それだけ述べると、圭太さんは病室を後にして行った。
唇に残る圭太さんの感触、心に残る罪悪感。
私は、雄大を裏切ってしまったような気がしてならなかった。


「行かなきゃ。」



私はベッドから降りると、松葉杖を使って雄大の病室へと脚を進めた。
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