白い海を辿って。

「…いいの?」


ようやく絞り出せた声は自分でも情けないほどに小さかった。



「傍にいても、いいの…?」

『当たり前だろ。いてくれなきゃ困る。』


普通でいたかった。

面倒だと思われたくなかった。

失ってしまう前に、自分から離れた方がいいと思っていた。



『明日実を失いたくないんだ。』


だけど、失いたくないと思ってくれている人がいる。

こんな私を、変えようとしてくれる人がいる。



『もう絶対、怖い思いなんてさせないから。だから俺から離れんな。』


彼の涙が首筋に落ちた。



「ねぇ、はるくん。」


今度はそっと、彼を傷つけてしまわないように腕を離す。

振り返って見上げた彼は、やっぱり泣いていた。



「お願いがあるの。」

『何?』

「続き、して?」

『えっ?』


彼は私を傷つけたりなんかしない。

絶対、力で支配しようなんて思わない。


だから、すべてをゆだねられる。



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