白い海を辿って。
『明日実、これ全部すげぇうまいよ。』
「良かった。一緒に作ったからだよ。」
『明日実と結婚したら毎日食べれるんだよなぁ。』
真面目な顔で言う彼に「気が早いよ」とまた笑ったけれど、少しだけ想像してしまった。
結婚。
まだ20歳だし、きっとまだまだ先のことだと思う。
でも、もしいつかできたら。
その相手は彼なのだろうか。
そのとき、ふと頭の中に浮かんだ言葉。
“たった1人の人生も守ることができなかった"
また同じことを繰り返してしまいそうで、自信がないと言った先生の声。
その声を必死で振り払う。
もう、私は先生を待つことをやめたのだから。
『明日実?』
ふいに黙りこんだ私に彼が心配そうに聞く。
彼と一緒にいて先生のことを思い出してしまうのは彼に対して失礼だ。
『ごめん、そんな先のこと想像できないよな。』
「ううん。」
彼を安心させるためにも何か言いたいのに、何も言えないまま2人で作った料理を見ていた。
1人でいるときよりも、2人でいるときの方が先生を思い出してしまうのはなぜだろう。