白い海を辿って。

『美術館で会った後、カフェでも会ったって言ってただろ?』

「うん。」

『あれは本当に偶然だったらしい。美術館でハンカチを拾ったことも。だから驚いて、とっさには何も話すことができなかったって言ってた。』


それでも、改めて話す場がいきなり現れた彼の職場だなんて。

結果的にまた警官沙汰になっているし、あの人は何も変わっていない。



「ねぇ、はるくん。」

『やっぱり危ないと思うんだ。』


私が彼を呼んだ声と、彼がそう言った声が重なる。

私が言いたかったことは、彼と同じだった。



『明日実と俺は幸せにやってるし、謝罪の気持ちは俺からしっかり伝えるって言ったら納得してる様子だった。反省してるのも本当だと思う。だけどやっぱり危ないよ、あいつ。』

「警察には…?」

『任意で連れてかれた。もう二度と俺にも近付かないように注意してくれただろうけど…念のため、しばらくは気をつけてた方がいいと思うんだ。』


反省してる風に見せかけて、実は別の狙いがあったとしたら…。

そんなことを考えて、身体が震えた。



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