毒舌紳士に攻略されて
「そりゃもう本気だったんだ。俺から木苺を奪おうとしていたしね。小さい頃なんて俺は元気にとって父親じゃなくて恋のライバルだったんだ」

「本当、あの頃は大変だったのよ?みっちゃんも大人げなく本気で相手しちゃって」

昔を思い出しながら話しているふたりには申し訳ないけれど、思わず吹き出しそうになってしまった。
だって坂井君だよ?
あの坂井君が本気でお父さんを恋のライバルだと思っていたとか……!

だめだ。面白すぎる。

吹き出しそうになり慌てて口元を手で押さえる。

「佐藤!なにやってるんだよ」

その声に振り返れば、すでに運転席に乗っている坂井君が「早くしろ」と言わんばかりに手招きしていた。

「ごめん!……すみません、それじゃ」

「えぇ。またいつでも遊びに来てね。元気の話ならいくらでもしてあげるから」

「アイツの恥ずかしい過去の話ならいくらでもできるしな」

「……はい!」

笑顔でもう一度頭を下げ、坂井君の元へと走る。
車に乗り込む際、もう一度振り返ればまだふたりは見送ってくれていて、最後にもう一度軽く頭を下げて助手席に乗り込んだ。

「っとに、遅いっつーの!」

その瞬間、坂井君の不機嫌な声が車内中に響く。

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