毒舌紳士に攻略されて
シンと静かな車内に、坂井君はポツリと声を漏らした。

「あー……ダッセ」

「――え?」

その声に顔を上げると、坂井君はハンドルにもたれかかっていた。

「……聞いたんだろ?ガキの頃、母ちゃんを好きだったって話」

「えっ!?」

坂井君の言う通り、お父さんからしっかりと聞いてしまったけれど、顔を見せないようにハンドルにもたれかかる姿を見せられては、正直に言っていいものか悩むところ。

「笑えるだろ?本気で母ちゃんと結婚しようとしていたんだぜ?しかも親父のこと、ライバル視しまくっていたし」

追い打ちをかけるように自ら過去を暴露されてしまうと、いよいよなんて言ったらいいのか分からなくなる。

「この話、俺が友達を家に連れてくるとよく親父に暴露されててさ。そのたびにみんなに大笑いされてきた。……だから別に慣れているし。佐藤も笑っていいから」

言葉とは反比例するように坂井君は、私の笑い声なんて聞きたくないと言いたそうに、大きな身体を小さくまとめた。

その姿を見た瞬間、胸が締め付けられてしまった。
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