毒舌紳士に攻略されて
それと同時に、ついさっきまでの自分の言動を激しく後悔してしまう。

そうだよ。人には誰だって知られたくない過去や、忘れたい記憶があるはず。
坂井君にとってはそれが幼少時代とはいえ、本気でお母さんのことを好きになったことなんだ――。
でも――……。

「笑わないよ」

「――え?」

坂井君は驚き顔を上げた。

「たっ、確かにお父さんに聞いた時はちょっとその……笑いそうになっちゃったよ?」

「……だろうな」

「でっ、でもね!それは面白いからとかじゃなくて、ギャップというかその……可愛いなって思ったの!!」

聞いた瞬間は吹き出しそうになっちゃったけど、面白いとは思わなかった。
いつも毒舌で完璧なくせに、幼少時代はしっかりと子供らしかったんだと思うと、可愛いなって思った。

もしかしたら坂井君にとって「面白い」と言われるより、「可愛い」と思われる方が嫌かもしれない。
でも私は面白いだなんて思わない。
項垂れる坂井君を見て、ただそれだけは伝えたいって思った。
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