毒舌紳士に攻略されて
ちょっと強引なところも、毒を吐くところもあった。
だから最初、坂井君を見た時にこの人は苦手だって思ってしまったんだ。

「うちの高校の図書室ってすごく古くて、置いてある本も昔のものばかりだったの。だから利用する人なんて誰もいなかったのに、彼だけは違った。他の図書委員の人に聞いてみたら毎日来ているって言っていて、本当に本が好きな人だったんだと思う」

琴美はなにも言わず、ただ私の話に相槌を打ちながら聞いてくれている。
思い出すと胸が苦しい。……でも最初から全てが嫌な思い出ばかりではなかったんだ。


*  *  *

「すみません、これ貸し出しでお願いします」

「……はい」

図書委員になって一ヵ月。
毎週当番の日に誰もいない図書室に彼はやってくる。
そして三十分以上は見定めをし、一冊だけこうやって借りていくのだ。

今日は歴史ものの本か。

貸し出し手続きをしながらも、つい彼がどんな本を借りたのか気になってしまう。

「それ、意外に面白いよ」

「――え?」

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