毒舌紳士に攻略されて
身を乗り出し、距離をグッと縮めて琴美は話を続けた。

「だってそうじゃない。ずっとこのまま嫌がらせされ続けるつもり?今はまだ陰口だったり、仕事押し付けられる程度だからいいかもしれないよ?でもね、そういうのって絶対エスカレートするよ。もしめぐみ自身になにかあったら大変じゃない」

「いや、でもそこまでは……。学生じゃなくて社会人なんだし」

中学生や高校生が一緒に働いているわけではないのだから。

だけどそれはどうやら安易的な考えだったようで、琴美はより一層距離を縮めてきた。

「甘い!!同じ女なのに、どうして女の恐ろしさを知らないの!」

グワッと効果音が聞こえてきそうなほどの表情に、思わず「ヒッ!」と声が出そうになってしまったものの、なんとか堪える。

「絶対坂井はめぐみがされていること知らないだろうから、一刻も早く言った方がいいよ。アイツのことだから何かしら対処してくれるだろうし」

坂井君が対処してくれる?……本当にしてくれるのだろうか?

いまだに興奮状態なのか、琴美はプリプリと怒りながらもゆっくりと椅子に腰を下ろしていく。


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