毒舌紳士に攻略されて
「どうせなら今メールしちゃったら?さすがに坂井も休憩とっているころじゃない?」

「いや、でも……さ。その……坂井君には話さなくてもいいと思うんだけど」

「はぁ?なに言っちゃっているのよ」

落ち着いた琴美の表情は、私の言葉によってまた激しく歪んでしまった。
そんな琴美を落ち着かせようと、必死に言い訳を並べた。

「だってさ別に私と坂井君は付き合っているわけじゃないし、本当……ただの噂に過ぎないじゃない?第一、坂井君は私のことなんてなんとも思っていないんだよ。……そんな私が助けを求めたところで、助けてくれるとは思えない」

違う。これは単なる言い訳だ。

「だけど――……」

「ごめん!……琴美が私のことを心配してくれているのは嬉しい。でも私、怖いんだと思う。……坂井君にまた素気なくされるのが」

「……え?」

さっき言った言葉はどれもただの言い訳。本当は怖いだけなんだと思う。

「好きとかよく分からないよ?でもね、怖いの。メールみたいに素気ない態度とられたり、言われたりするのが」

ガヤガヤとうるさい社員食堂の中では、私の声など簡単にかき消されていく。

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