毒舌紳士に攻略されて
パソコンの電源を落とし、琴美と同じように両手を挙げて身体を伸ばす。

「やっぱ最近の残業は全部先輩達のせいだったよね。すごいね。仕事押し付けられないと定時で上がれるんだから」

コソッと嫌味を言い出した琴美に苦笑いしつつ、帰り支度を始める。

「まぁ……それもあるかもしれないけれど、でも今日はなんかスムーズに進んだし。たまたまだよ」

仕事を押し付けられなかったにせよ、仕事量はいつもより多かったのは事実だし。

琴美とふたり帰り支度をし、席を立とうとした時。

「ちょっと佐藤さん」

床に数人の影が映った瞬間、突然聞こえてきた声。
ゆっくりと顔を上げれば、そこには昨日私に仕事を押し付けてきた先輩と、いつも陰口を叩かれていた先輩達数名が周囲から私の姿が見えないよう、取り囲んできた。

そして両腕を組んでは威圧的な態度で見下ろしてきた。

「まさかもう上がるとか言わないわよね？」

「え……」

ジロッと睨みを利かせ、手にしている貴重品に目配せしてくる。
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