毒舌紳士に攻略されて
今回ばかりは坂井君が吹き出したくなる気持ち、痛いほど分かる。

「……ごめんなさい、お母さんが変なこと言って」

恥ずかしすぎる。普通言う?娘を差し出して「帰ってこなくてもいい」なんて。
そもそも私と坂井君はそういう関係ではないし!

恥ずかしさも相まって坂井君より先に歩き、横づけされている車へと向かう。

「佐藤の母ちゃんっていいな。俺、個人的に好きだわ」

余程ツボったのか、いまだに「クククッ」と声を押し殺して笑っている人に言われても、説得力がない。

「……ありがとう」

乾いた笑いを張り付けて言うと、坂井君はいつものように助手席のドアを開けてくれた。

その動作はいつもの如くスマートで、ドキッとするのも忘れてしまうほどだ。

ぺコッと頭を下げ乗り込むと、やはりドアを閉めてくれた。
最初はこの行動に驚いていたというのに、もうすっかりと定着しつつあるのだから恐ろしい。
こんなことに慣れてしまっては、この先坂井君以外の男の人と付き合えなくなってしまうかもしれない。
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