毒舌紳士に攻略されて
そんな恐ろしいことを考えながらもシートベルトを締める。

「とりあえず食事してもいい?腹ペコなんだ」

「あっ、うんもちろん」

さっきはお母さんがいたから気にして見ていなかったけれど、坂井君はスーツ姿だ。

「もしかして午前中、仕事だったの?」

車を走らせて少ししてから聞いてみると、「あぁ」と返事が返ってきた。

「ここのところずっと休日出勤。だけど今日は午前中で上がれそうだったからさ。……悪かったな、急に誘ったりして」

ちょうど信号は赤に変わり、申し訳なさそうに眉を下げ謝ってきた坂井君に、ドキッとさせられてしまう。
このままずっと坂井君を見ていたら、ますますドキドキさせられるばかりだ。
瞬時に判断し、すぐさま視線を落とす。

「だっ、大丈夫!私は別に暇だったし!」

そしてドキドキなんてしていないわよ!と言わんばかりに早口でまくし立てた。

「ぶっ。……それは良かったよ」

だけど坂井君にはやはりバレバレなのか吹き出し、からかうように「それは良かった」なんて言ってきた。
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