毒舌紳士に攻略されて
「それにしてもうまくやったよな」

「まぁな」

あれ……?この声って……。

近付いていくたびに鮮明に聞こえてくる声に、心臓の鼓動は速さを増していく。

「しかも今日はこれからデートだろ?ったく。俺のおかげだってこと、忘れるなよな」

「分かってるって」

完全に声が聞き取れる場所までくると、見つからないようそっと身を潜めた。
そして気付かれないよう、休憩スペースにいる人物の姿を確認する。

やっぱり……!

声だけで分かってはいた。
でも姿を見ていなかったし、半信半疑だったけれど思った通りの人物を捉えた瞬間、変な緊張感に襲われてしまう。

落ち着け、落ち着け。

聞こえないよう大きく深呼吸をし、自分自身を落ち着かせる。
そうでもしないと、声を上げてしまいそうだ。

だって休憩スペースにいたのは、十九時に玄関先で待ち合わせしていたはずの坂井君と、同期であり開発部に所属している高橋君だったのだから。
しかもなにやら楽しそうに談笑している。
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