毒舌紳士に攻略されて
好きなのに、分からない。
「……はい、そうなんです。すみませんが今日も会社、休ませて下さい」


十二月二十六日、仕事納めの日。
昨日の朝と同じように自宅の電話から、会社に休みの連絡を入れていた。

「はい、すみません。よろしくお願いします」

上司に謝罪し、電話を切ると同時に大きな溜息が漏れてしまう。
それはもちろん、自分自身に対してだ。

「社会人失格だな……私」

たかが失恋したぐらいで会社を休むなんて、社会人失格もいいところだ。
しかも怖くてスマホの電源を入れられないでいるし。
とことん最悪すぎる。

でもそうは分かっていても、どうすることもできない。

そのままゆっくりと二階へと上がっていく。
両親とも私が本当に体調が悪いと思っている。実際二十四日の日、沢山泣いたおかげで昨日は熱が上がっちゃったし、食欲もない。
そんな私を見て仮病だとは思っていないようだ。

本当は違うのにな。風邪とか体調が悪いわけじゃない。
ただの恋の病だ。しかも失恋だし。

自分の部屋へ戻り、そのままベッドに倒れ込んだ。
横になったまま手を伸ばしてしまうのは、ベッドサイドに置きっぱなしの電源の入っていないスマホ。
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