毒舌紳士に攻略されて
私、逃げているだけなんだ。
坂井君と向き合うのが怖いんだ。
坂井君の口から「全部嘘だった」「好きじゃない」そう聞くのが怖いんだ――……。

坂井君が好き。
だから聞くのが怖い。
聞いてしまったら、失恋してしまうかもしれないから……。

「なんだ……全然変われていないじゃない」

乾いた笑いが出てしまう。

琴美は私のことを変わったねって言ってくれた。
だけど全然だよ。全然変われていない。
弱い自分のまま。何も言えない自分のままだ。

今の曖昧な状況のままいたいだけなんだ。

「最低じゃない」

本当に最低だ。
自分の気持ちを伝えることも、坂井君の気持ちを確かめることも、前に進むことも出来ない。

心底呆れてしまう。
呆れてしまうのに、な。
それでも私は、どうしたらいいのか分からない。

怖い。無理。答えが出ない。

その繰り返しに陥る。

ただ好きなだけなのに、どうして?

結局この日の夜も、泣いて過ごすばかりだった。
スマホの電源も入れられぬまま――。
< 275 / 387 >

この作品をシェア

pagetop