毒舌紳士に攻略されて
「落ちる覚悟はしていたから、何枚もハンカチは持ってきていたんです。だからその……差し出がましいと思いつつも声を掛けてしまいました」

自信を失っていくように声を小さくさえ、下を向いていく彼女の姿に素直に“可愛い”と思ってしまった。
おかしなことじゃないし、むしろ感謝されるべきことをしたというのに、どうして自信を持たないのだろうか?
でもそこがまた可愛いと思えてしまう俺は、どこかおかしいのかもしれない。

苦しい胸を押さえ、差し出されたままのハンカチをそっと受け取ると、彼女はすぐさま顔を上げ俺を見つめてきた。
その視線にまた胸が苦しくなりつつも、どうにか言葉を絞り出す。

「……使ってもいいんだよな?」

「えっ、あっ!もちろん!」

「サンキュ」

もうとっくに涙なんて引っ込んでいたけれど、ここは彼女から借りたハンカチで涙を拭う真似をする。
だってどうしたらいいのか分からねぇし。
今の気持ちを言葉にしろって言われても分からないくらい、初めてなんだ。

でも――……。

ハンカチで目元を拭きながら彼女を盗み見た瞬間、その手の動きは止まってしまった。
だって俺を見て嬉しそうに笑っていたから――……。
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